M&P 機械材料・材料加工部門

活動報告

MATERIALS and PROCESSING
部門所属分科会・研究会活動報告

2020年5月

 

「PD(Particle Deposition)プロセス研究会」

主査:榊 和彦(信州大学)

PDプロセス研究会は,溶射やエアロゾルデポジションなどの粒子積層による成膜プロセス:PD(Particle Deposition)法の基盤構築ならびに発展拡大の可能性を追究すること目的に,2003年9月に福本昌宏氏(豊橋技術科学大学)を主査,筆者を幹事として発足しました.2018年度より筆者(主査)と山崎泰広氏(幹事,千葉大学)が引き継ぐことになりました.福本先生はこの3月でご退職されました.これまで本研究会の発足以前から溶射技術を含めたコーティング技術の基礎研究から応用まで幅広く取り組まれ,それらの国内はもとより国際な発展に大変ご尽力をいただきました.この場をお借りして,感謝を申し上げさせていただきます.

さて,2019年度は前号でご紹介したように,2019年3月28日にタワーホール船堀(東京都江戸川区)で日本溶射学会コールドスプレー研究分科会と共催により,3件の講演を行い,計 17名が参加し学術交流を行いました.

また,溶射技術が日本に導入されて百年となった2019年は,2004年以来,3回目の日本での国際溶射会議(ITSC)がパシフィコ横浜で5月26日から29日まで開催され,40カ国から千名余の参加者と約280件の講演発表があり,盛況に終えました.クールジャパンをスローガンに,日本の溶射技術を海外に宣伝するため,日本の特色ある溶射技術の紹介を行うクールジャパンシンポジウムと展示会での企業などからの技術を紹介するインダストリアルフォーラムとを企画しました.クールジャパンシンポジウムでは,国内の今後が期待される若手研究者とシニア研究者が日本独自の優れた6件の研究成果を世界に紹介しました.インダストリアルフォーラムでは,溶射装置,ロボットなどの周辺装置,溶射材料や評価解析装置など国内企業14社を含む27社が,各社の最新技術を紹介していただいた.また,テクニカルプログラムでは,230件の口頭発表と49件のポスター発表が行われ,各種溶射プロセス技術や材料の進化による高品位な皮膜開発やコールドスプレーによるアディティブ・マニュファクチャリング(3D金属造形)などを含む最新の研究成果が発表されました.さらに,溶射研究の将来を担う若手研究者育成のためのYoung Professionalsセッションで10件の発表がありました.併設の展示会では,最新の溶射装置,周辺機器,溶射材料,皮膜評価装置など約60のブースが出展され,30日(木)のインダストリアルツアーは,日産自動車 横浜工場で,最新のエンジンのシリンダー内面への溶射施工設備やエンジン組立工程などを海外からの36名を含む42名が見学しました.2020年3月13日には日本溶射学会 関東支部との共催で研究会を開催する予定でしたが,新型コロナウィルス感染症拡散拡大防止のため延期いたしました.このほかにも新たな展開がみられるため粒子の積層素過程をテーマに研究会を計画しております.

本研究会の現構成員は20余名ですが,興味をお持ちの方は榊(ksakaki@shinshu-u.ac.jp)まで随時ご連絡をお願いいたします

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「次世代3Dプリンティング研究会」

主査:古川 英光(山形大学)

3D プリンタ,Additive Manufacturing などの積層造形技術,付加加工技術への様々な動きに総合的に対応するために,京極秀樹近畿大学教授を主査,古川英光山形大学教授を副査,秦誠一名古屋大学教授を幹事とする「次世代3D プリンティング研究会」を2013年10月に発足させました.本研究会の目的は,米国をはじめとする他国の研究開発動向,各自の研究から生み出されるシーズなどの情報交換による3D プリンティングに関する広範な調査のみならず,会員相互の交流を通じての「次世代」の3D プリンティング技術の実現です.発足後,多数のご参加を受け,現在70名以上の会員で活動しています.

2019年度は,新たに古川英光山形大学教授を主査として,秦誠一名古屋大学教授を幹事として,設置期限の延長を行い.新しい体制で取り組みを進めて参りました.

9月の秋田大学での機械学会年次大会では,OS「次世代3D プリンティング」では5件の発表がありました.また,関連した取り組みとしては,2019年12月12日には戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/革新的設計生産技術の終了後の初めて会合として,「第一回設計生産情報交換会」がつくばの産総研で開催されました.特別講演Iとして「設計と生産の融合の想いと実際,今後の展開」(明治大学 大富浩一先生),特別講演IIとして「SIP第1期/革新的設計生産技術(佐々木PD)を活かしたSIP第2期/統合型材料開発システムによるマテリアル革命(三島PD)への展開」(大阪大学 中野貴由先生)などの発表と意見交換を行いました.

2020年度は,既に新型コロナウイルスの影響が大きくなってきております.産業界でも,サプライチェーンを国内に持っておこうという考え方が出てきています.また,私の周りでも,マスクやフェイスガード,人工呼吸器を3Dプリンティングやレーザーカッターなどで高速に生産し,現場に供給する動きが起きています.このような新しい動きを契機と捉え,3Dプリンティング,Additive Manufacturing,デジタルマニュファクチャリングの分野において,他部門や他学会との連携も模索し,国際的な競争力を持つネットワークを国内に整備し,大きな変革のうねりを創り出して,強靭な製造業の未来の開拓を進めて参りたいと思います.研究会へお問い合わせは,主査の古川英光(furukawa@yz.yamagata-u.ac.jp)までご連絡ください.

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「高分子基複合材料の成形加工に関する研究会」

主査:小林 訓史(東京都立大学)

高分子基複合材の中でも,繊維強化プラスチックス(FRP)は,製品の力学的特性が成形時の様々なパラメータに依存するため,金属材料と比較して取り扱いが難しい材料です.本研究会は,2016年7月に設置され,FRPをはじめとした高分子基複合材料の成形と評価に関し,成功例などの良い事例だけでなく,失敗例を含めたデータベースの構築を通して,本材料の取り扱いをより容易にするため,検討を重ねてきました.これまでのワークショップにおける議論を通じて,繊維基材への樹脂含浸のしやすさを表す浸透係数の測定についてベンチマーク策定を行い,レジントランスファー成形でのラウンドロビン試験を行うことにより,測定法における問題点を検討してきております.また,成形・評価に関する様々な講演を通して,産学の交流を深めています.

 昨年度は4回のワークショップを行いました.

第11回ワークショップ(2019年6月1日,首都大学東京 南大沢キャンパス)

Ÿ  一方向CFRPの圧縮破壊に及ぼすランダムな繊維初期不整の影響,髙橋拓也(東京工業大学)

Ÿ  熱可塑性樹脂複合材料の二次加工,仲井朝美(岐阜大学)

Ÿ  VaRTM法によるハニカムコア成形,小山昌志(明星大学)

Ÿ  カーボンナノチューブ複合材料の力学特性評価と今後の展開,後藤健(JAXA)

Ÿ  Permeability測定について―首都大学東京の事例,磯野史也・小林訓史(首都大学東京)

Ÿ  Permeability測定について―大阪市立大学の事例,澤田夏志・中谷隼人(大阪市立大学)

第12回ワークショップ(2019年8月30日,広島県立総合技術研究所 西部工業技術センター)

Ÿ  CFRP円筒のFEM衝撃解析,松永尚徳(広島県総研)

Ÿ  高じん性接着剤によるCFRP接着継手の混合モード破壊じん性評価,河野洋輔(広島県総研)

Ÿ  ポリアミド添加剤の添加率が樹脂特性とそれをマトリックスとするCFRTPの曲げ強度に及ぼす影響,西田裕紀(広島県総研)

Ÿ  Permeability測定について―首都大学東京の事例,磯野史也・小林訓史(首都大学東京)

Ÿ  Permeability測定について―大阪市立大学の事例,澤田夏志・中谷隼人(大阪市立大学)

Ÿ  Permeability測定について―京都工芸繊維大学の事例,中島広貴,大谷章夫(京都工芸繊維大学)

第13回ワークショップ(2019年11月26日,北海道大学工学部)

Ÿ  ファイバー縫付機および電着樹脂含浸法による複合材作製の試み,本田真也(北海道大学)

Ÿ  CFRP積層板のプライドロップオフによるテーパ構造の成形と強度評価,高橋航圭(北海道大学)

Ÿ  3Dプリンターで成形されたCFRTP平板の自由振動特性,太田佳樹(北海道科学大学)

Ÿ  Permeability測定について―首都大学東京の事例,小林訓史・磯野史也(首都大学東京)

Ÿ  Permeability測定について―大阪市立大学の事例,澤田夏志・中谷隼人(大阪市立大学)

Ÿ  Permeability測定について―京都工芸繊維大学の事例,中島広貴・大谷章夫(京都工芸繊維大学)

第14回ワークショップ(2020年3月13日,沖縄青年会館)*

Ÿ  Permeability測定について―首都大学東京の事例,小林訓史・磯野史也(首都大学東京)

Ÿ  Permeability測定について―大阪市立大学の事例,中谷隼人(大阪市立大学)

Ÿ  Permeability測定について―京都工芸繊維大学の事例,大谷章夫・中島広貴(京都工芸繊維大学)

Ÿ  Permeability測定について―東京理科大学の事例,荻原慎二(東京理科大学)

*新型コロナウイルスの感染拡大に伴う感染予防対策として,受付にて手指消毒,マスクの配布,間隔を空けた着席,及び一部講演をWeb講演として実施.

 このほか第27回機械材料・材料加工技術講演会ではオーガナイズドセッション「高分子/高分子基複合材料の成形加工」を企画し,VaRTM成形や熱可塑性複合材料の成形など計18件の講演を通して活発な討論を行いました.

 現在検討している浸透係数測定法のベンチマーク策定についてはある程度の方向性は出ているものの,未だ問題も少なくなく,皆様のお知恵を拝借したいと思っております.また,熱可塑性プラスチック複合材料の成形やCFRP積層板のプライドロップオフに関しても検討していきたいと考えております.

次回ワークショップは新型コロナウイルスの影響により未定となっておりますが,最新のFRP成形に関する研究について,学生等若手研究者や中堅研究者による御講演を企画する予定です.ご興味をお持ちの方は小林(koba@tmu.ac.jp)まで随時御連絡お願いいたします.

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「減災・サステナブル工学研究会」

主査:浅沼 博(千葉大学)

当研究会は,知的材料・構造システム等の革新的分野を防・減災分野に適用するため2011年に千葉大を中心に創成した減災・サステナブル学を,機械工学分野でも展開させるため2016年9月に設置したものです.防・減災は急務であり,2018年度からは津波シェルター普及研究会と協働することで一般社団法人減災サステナブル技術協会を設立し,活動を強化しました.昨年度の主な活動内容は以下の通りです.

1) 研究会議・見学会の開催

第8回会合を7/31に日立造船・堺工場において開催.内容は,高木敏行氏(東北大学教授)による特別講演「福島第1原子力発電所のデブリ取出し作業用の冷却水循環システム配管の管理方法に関する日仏共同研究プロジェクト」,仲保氏(日立造船)による会社・技術紹介およびHitz防災ソリューションラボラトリー(陸上設置型フラップゲート式可動防潮堤neo RiSeデモ等)見学会,および水野氏,藤原氏,小野田氏・滝川氏による,ミズノマリン,フジワラ産業,小野田産業の技術・製品紹介.

2)当部門ニュースレター(No.58)に記事掲載

巻頭言(「減災・サステナブル学」-Disaster Free を目指して-)および9件の解説等.

3)日刊工業新聞への記事掲載

 防災の日「サステナブルな防災・減災の試み」として,8/30の17-18面に掲載.

4)日本市民安全学会との協働

同学会会長(石附弘氏)の依頼で防災緊急研修会に参加,講演.主催は警察察政策学会研究部会で,12/2に日本倶楽部で開催.講演題目は「防災における平時・非常時の機能両立へ向けて - 減災・サステナブル工学の御提案」.

5)院内集会の企画・講演

12/18に衆議院第一議員会館において開催.講演題目は「防災・減災サステナブル技術の創成と産業・人材育成 - Disaster Free の実現に向けて - 」.

6)「レジリエンス×格付け」ジャパンサミット2020に参加

2/28に東京国際フォーラムで開催.セッションD「レジリエンス格付けラウンドテーブル&認定式」のパネリストとして登壇.

7)その他と今後

 国際会議等での情報発信・討議(BAMN2019(米国)等),NASA始め内外の研究機関,教育機関や企業との連携に加え,新たに,日本工学アカデミー,日本防災産業会議,モノづくり日本会議,プラチナ構想ネットワーク,等々との連携を検討した.

今後は,新型コロナウイルス禍対策等も加わり慌しいが,日本機械学会の中での,より横断的な展開,シニア活躍の場の提供,独創的若手育成に尽力したい.

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「ナノカーボン複合材料の高性能化に関する研究会」

主査:川田 宏之(早稲田大学)

本研究会は,ナノカーボン材料の一つであるカーボンナノチューブの高度利用技術に関して,産官学のメンバーで構成された発足した研究会である.主査は川田宏之(早稲田大学理工学術院教授),幹事は細井厚志(同准教授)が担当している.本研究会では,プラスチック基複合材料用の強化繊維として利用可能な高強度繊維を,紡績可能なマルチウォールカーボンナノチューブ(CNT)から成形し,ポスト炭素繊維の代替品を開発することを主たる目標に,広範囲なナノカーボン材料の利用可能な技術の探査を研究対象としている.現在,20名強の会員で活動している.

2019年度は,以下の要領で第2回研究会を開催した.今回は,浮遊合成法によるCNT糸の研究で,高強度繊維を開発し,産業から熱い視線を注がれている筑波大の藤田淳一先生に基調講演をお願いした.また,各研究グループからの進捗状況に関して報告があり,最後にトヨタ自動車の高橋氏より世界で行われているCNT紡績糸に関する研究動向の話題提供があった.いずれも大変ホットな研究成果ならびに取組みに関する報告だったので,予定していた時間では収まらなかった.本研究の最終的な数値目標は,高強度炭素繊維の強度(東レT700相当)と同等となっていて,かなりハードルは高い.しかし,着実な研究成果が得られていて,達成するのも時間の問題であるように感じている.2020年度は,産業界からの取組みなどを中心に研究会をさらに活性化していく考えである.

なお,研究会へのご参加等のお問い合わせは,主査の川田宏之(kawada@waseda.jp)までご連絡下さい.

第2回研究会(2020年1月17日,於:早稲田大学)

1)基調講演「高品位CNT の連続合成と強度特性」藤田淳一先生(筑波大)

2)研究プロジェクト進捗状況の報告

・「CNTの物性値が及ぼすCNT糸の機械的特性への影響」十河和嘉君(早稲田大)

・「カーボンナノチューブの力学特性モデリングと欠陥補修方法の検討」 白須圭一先生(東北大)

・「Fe-Gd触媒による紡績性カーボンナノチューブの合成ウインドウ拡大」 井上寛隆君(岡山大)

・「一方向配向黒鉛化CNT/エポキシ複合材料の諸特性」井上翼先生(静岡大)

・「ラマン分光法による配向CNT複合材料におけるCNTの微視的ひずみ評価」小笠原俊夫先生(農工大)

3)「世界のCNT糸の研究事情(海外現地調査報告)」高橋和彦氏(トヨタ自動車株式会社)

4)全体総括 川田宏之(早稲田大)

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